旅行けば千鳥足

北に美味い魚あれば冬に行き、南の焼酎飲みたさに帰省をし、西の良い居酒屋の噂を聞けばしこたま飲み食いをする。そういう人に私はなりたい

泊食分離で旅のスタイルは変わるのか?メリットとデメリットから考える新しい旅行の形

夕食を食べる店がない! 明日はどっちだ!?

昨日の新潟旅の準備の際に、宿泊場所を探していた時のこと。

今回宿泊したさくら亭のウェブサイトに、何やら見慣れぬお知らせが。そちらを一部引用。

さくら亭よりご連絡

当館ではこの度、2025年7月22日(火)よりお夕食の提供を
当面の間休止させていただくこととなりました。

お客様にはご不便をおかけし、大変申し訳ございませんが、何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。
ご不明な点等ございましたらお気兼ねなくお問い合わせくださいませ。

お食事 | 越後湯沢温泉 さくら亭

そういえば、以前一人旅の際に泊まった鳴子温泉の『旅館すがわら』も、すべてのプランにおいて食事提供は行っていない旨が、公式サイトに掲載されていました。

自分が確認したのは2店舗のみであり、それがすべての旅館等に当てはまるわけではありませんが、新たな潮流として生まれようとしているのは確か。今回は、食事提供の取りやめについて自分の意見を書いていこうと思います。

なぜ今、この潮流が起きようとしているの?

この流れのことを泊食分離と言います。言葉の通り、宿泊するところと飲食するところを分けることを指します。宿泊料金と食事料金を別立てにすることで、施設内だけでなく近隣の飲食店での利用を促す施策です。よっぽどのことがなければ当然晩御飯は食べるわけで、それによって宿泊施設外への移動を促し、宿泊施設以外へも経済活動を波及させる目的があります。

泊食分離の流れが出てきたことの理由として、以下の項目が挙げられます。

1.働き方改革による人的リソースの不足

フロントや清掃、調理、配膳等々……多くのリソースを必要とする一方で、働き方改革による労働時間の制限や、そもそも人手不足であったりなど、旅館・ホテルを取り巻く環境は大変厳しいものがあるのではと思料します。

2.行動様式並びに食の多様化

また、個々人の行動様式も大きく変化しているかと思います。私が生まれる前後なんかは会社での団体旅行なども盛んであったかとは思いますが、今は少なくとも私の周りでは聞いたことがありません。海外旅行にも昔と比べて行きやすくなっているでしょうし、個人での一人旅も少なくないかと思います。

夕食の設定がされていると、どうしてもそれ基準で動く必要が出てきます。時間の制限は言わずもがな、例えば観光地でちょっと名物を摘まんでみたいけど、夕食の時間を考えると控えておいたほうがいいかな……と考える人もいるかもしれません。

3.インバウンド対策

加えて、昨今は海外からの観光客を多く呼び込もうと躍起になっています。国内の旅行客とは異なり、外国人観光客はある程度腰を据えて滞在するようです。夕食付がデフォルトになっていると、どうしても似たようなものばかりで飽きてしまったり、そもそも思っていた食事とは異なるものが出てきてがっかり……みたいなケースもあると聞きます(これについては単純にリサーチ不足であったり、インスタなどのSNSに載っている食事を想定している節があるやもしれません)。

宿泊者側から見た泊食分離のメリット

宿泊者側から見たら、実際どのようなメリットがあるのでしょうか

1.時間などの制限から解放される。

前段で書いたように、夕食の時間はある程度決められています(今回宿泊したさくら亭さんは、18時でいいですかと確認されました。)。私のように、何もしない旅を目論んでならばいざ知らず、普通であれば、いろいろ楽しみたいというのが心情と言うもの。ものによっては、夕方~夜からのほうが楽しめるというものもあるでしょう。それを旅の目的としている場合、仮に宿泊と飲食がセットになった料金体系しかない場合は、選択肢から外れる可能性もあります。

2.食の自由度が高まる。

自分の食べたいものを食べ、飲みたいものを飲む。これって最高の贅沢ですよね。
折角の旅行なのだから、贅沢したいという欲が出てくるのも至極当然のことです。また、人によっては地元の人との触れ合いを、旅の楽しみにしている方もおられるでしょう。そのような場合、夕食なしのパッケージを選択できれば、その目標も達成できます。以前、北海道を稚内から函館まで縦断したときに、函館の屋台街で知り合った女性二人組と意気投合し、近所の立ち飲み屋に連れ立っていったことを今でも思い出します。

3.旅の費用を抑えることもできる。

逆に飲食にそこまで執着していないという方もいると思います。適当に近所のスーパーやコンビニで買ってきて、部屋で簡単に済ませたい、あまり費用を掛けたくないという方の場合は、素泊まりのような食事提供のないほうが重宝します。

 

宿泊者側から見た泊食分離のデメリット

すべての事象にはメリットだけというのはありません。宿泊者側から見たデメリットは、どのようなものがあるでしょうか?

1.夕食難民になる可能性

どの旅館等の周りにも、潤沢に飲食店があるわけではありません。一軒一軒のキャパシティーがすくないこともあるでしょうし、下手すると片手で数えるほどしかないというエリアもあると思います。自分が夕食にありつけない可能性は、無視はできないでしょう。予約をするという手もあるでしょうが、予約を受け付けていないところだと……ねぇ。

宿泊施設で夕食の提供を受けられるパッケージであれば、少なくとも難民になることは避けられます。

2.思いのほか費用が掛かる(ことがある)

皆さんも経験がありませんか? 注文する前はこれとこれを頼んで……と考えていたのに、他のお客さんの注文が殊の外おいしそうに見えたり、興に乗ってお酒をいろいろ注文したりして、気づけば予算オーバーしてしまったこと。

私はあります、結構。

旅館等で夕食を食べる場合、追加の飲料代はかかるかもしれませんが、料理の分に関しては基本追加料金はかからないはずです。すでに宿泊料金に含まれているわけですから。今回、私が夕食付にしたのは、外で食べたら絶対予算オーバーする確固たる自信があったからです。いらないよそんな自信。

今後はどうなっていく?

単なる旅好きで専門家ではないので確証はありませんが、泊食分離の流れはこのまま進行していくものと思います。全国的な人出不足の流れが止まる気配はありませんし、「自分が流れたいように流れる」という個人の考え方が、今後転換することも考えにくいです。

ただ、今回の旅でも思ったのですが、旅館内ですべてが完結するというのは、メリットの一つだということです。「何もしない」ことが目的となるということは、「何かを決めることを、ちょっとの間手放したい」ニーズも同時に存在しているのです。

そのニーズを受け止める受け皿が、この流れでなくなってしまわないことを、切に願う次第です。

 

今回は以上です。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

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