奈良の国立博物館で知識を吸収したのち、「かっちゃんの大衆酒場 the Stand」でアルコールを吸収した、あとの話。
さて、というところで2軒目を探す。とは言いつつも、すでに目星はつけている。
観光客でにぎわう東向商店街も、一本中に入れば、人の往来はまばらになる。商店街と小西さくら通りに挟まれた小道にあるのが、2軒目の「369 ミロク」である。
今回は昼過ぎから伺ったが、通常は朝九時からオープンと言う気前の良さ。提灯にあるようにまさに「朝から呑める幸せ」である。入店時には3組ほど。一人で楽しむご老体から、若い男性のグループまで。カウンター越しにおかみさんに促され、入り口手前の角に陣取る。

1軒目ですでに食事は済ませているので、ここでは軽めに、酒のつまみ三種盛り。ここは日本酒の品ぞろえもよく、今回伺ったときにはいくつか品切れにはなっていたものの、壁側には30種程度の写真付きリストが、メニューにもいくつか乗っている。

メニューを見て、我が目を疑った。勝駒があるではないか、しかも純米のだ。
富山は高岡の清都酒造場で作られており、その名は日露戦争での戦勝を記念して名付けられたものだ。生産量が少ないため、県外で見かけることはほとんどなく、少なくとも関東では一度も飲んだことがない。コロナ渦に一度だけ、有楽町の物産館で見かけたことがあるが、それっきりだ。それがまさか、奈良の立ち飲みで見かけることができるとは――何たる行幸か。
頼まずにはいられない、前のめり気味で一杯お願いした。
メロンともバナナとも評される香りと、決して前に出すぎない旨さたるや。華やか過ぎないのがまたいい。まさに食中酒にふさわしい一杯だと思う。グラスで出してくれるのが特にいい。破顔せずにはいられない。
ゆっくり堪能したのちに、別のをもう一杯。

長龍の「吉野杉の樽酒」を頼む。杉の香りはそこまで強くなく、ほのかに漂ってくるのがたまらない。
2杯飲んだところで、妻から連絡があり、妻と会社の方たちと合流することに。駆け足であったが、ここで切り上げて、そちらへ向かうことにした。その店はタコスの店のようで、自分がこれまで聞いたことがないようなテキーラが無数に存在していた。何杯か飲んだことは覚えているが、銘柄までは分からないため、今回は割愛。
奈良の居酒屋も侮りがたし。今度はまた別の店も開拓したいものだ――。