つい先週旅行に行ったばかりだと言うのに、思いがけず今週も旅行と相成った。
夫婦で行くといえ、もうかれこれ10年ぶりだろうか、随分と久方ぶりの奈良である。妻は会社の先輩に会いに行くということで、私はそのご相伴に預かったというわけである。
東京駅を出発して2時間ほどで京都駅に着く。やはりのぞみは速い。ちょっと寝ている間に静岡を過ぎて、再度うたた寝をしていたらもう名古屋駅に滑り込んでいた。旅情ガン無視でビュンビュン飛ばしていくのは考えものだと思っていた時期はあるが、最近はもっぱら「Time is Money」精神である。時間は金で買えることを理解してから、選択肢が広がったように感じる。
京都駅からは近鉄に乗り、近鉄奈良駅へ向かう。時間としては30分程度だろう。しかしまぁ、外国人観光客の多いこと。乗っていた車両だけで考えれば、日本人の方がマイノリティだ。私は海外はドイツしか行ったことがないのだが、それでも、日本の車両は一回り小さいように感じる。そりゃあ、何日か分の荷物を詰め込んだキャリーケースを引いていれば、邪魔と感じてしまうのはしょうがない。
我々が駅についてから、多少遅れて、妻の会社の先輩と、彼女の後輩がやってきた。どちらとも面識があったので、軽く挨拶を交わして、私は駅を後にする。まずはこのガラガラを何処かに預けなければ始まらない。とりあえず、今回泊まるホテルに向かう。
近鉄奈良駅そばの商店街は、異様なほどの人でごった返していた。地元と思わしき人は言わずもがな、自分を含めた日本人観光客、外国人観光客。そして修学旅行生の群れ……学生服の軍団を見て、今日は日曜日のはずなのにと思わずにはいられなかった。いつからか、修学旅行が日曜に食い込むようになっていたのかしら。
今日の宿に荷物を預け、ようやく身軽になったところで街に出る。商店街には様々な店がひしめき合っている。その中にも立ち飲み屋がちらほらと見受けられるが、そこはまた改めて。
商店街を抜け、参道をさらに突き進み、15分ぐらいほど歩いたところで、奈良公園の端に出た。

奈良といえば鹿だ。私の脳内奈良公園では、有象無象の鹿が我が物顔で闊歩し、少数派である人間が平服し、嵐が過ぎ去るのをただ待つのみ……といった、終末世界を想像していたのだが、そんなことはまったくなかった。7月初旬というのに猛暑と言うか酷暑と言うか、地形的な要因もあるのか蒸し暑く感じる。そのため鹿たちも、木陰に固まって、暑さが過ぎ去るのをただ待っているように思えた。

誰も彼も、鹿せんべいを買うのだろうか、鹿せんべい売り切れの札を出している店がちらほら。鹿せんべいがここまで盛況であるのなら、きっと闇鹿せんべい屋と、それを撲滅せんとする、闇鹿せん警察の壮絶なる死闘が繰り広げられていたとしても、過言ではないだろう。
……何を言っているんだろう、暑さで頭をやられたか。
私はと言うと、足元に点在している鹿の粗相の後を軽やかに避けつつ、奈良国立博物館へ向かった。700円で涼しい思いもできるし、歴史に触れることもできる。時間も潰せるので一石二鳥どころではない。実にありがたい施設である。鹿の糞を踏むこともないし。
ひとしきり展示物を堪能し、時間を見ると13時半を過ぎている。ホテルのチェックインは15時半だから2時間近くは一人飲みが楽しめる。2時間というのが実に丁度いい。それより短いと不完全燃焼になりかねないし、逆に長いと緊張感が足りない。チェックインの際に前後不覚になってしまうのも問題だ。
先程の商店街に戻り、1軒目に入る。
入口の戸を引く。奥行きが随分ある店だ。手前の丸机がグループ用なのだろうか。通路の左右にカウンターがあるのが面白い。証明ややや暗く、快晴の外と比べると、まるで別世界のようだ。空いているカウンターに座るよう促され、私はキッチンに背を向ける形でカウンターに腰を下ろした。



ひさしぶりに万願寺とうがらしを食べた。初めて食べてのは、いつだったろう。太田和彦氏の著書を片手に京都へ行ったときだったろうか。川端二条の「赤垣家」に行ったときだったろうか。もう随分と前のことということだけは覚えている。
自分の想定しているとうがらしより大ぶりで、食べ超え他のあるところもいいし、少しの辛味と、食べ進んでいくとじんわりと甘みが滲み出てくるのが、たまらなくいい。こんなうまい唐辛子があるのだと感心したことを思い出す。
何をつけずとも、満願寺じしんの旨味と鰹節の旨味があるので、十分ではあるが、カウンター備え付けの醤油を垂らして食べてもまたいい。が、醤油をつけるにしろつけ内にしろ、できれば一言教えてもらえるとありがたかった。
完全に自分の責ではあるが、キッチンに対する形で座ればよかった。
ここではもう1杯、プレーンのサワーを飲んで終了。外へ出ると、太陽がまだ外界を焦がし続けている。熱視線から逃げるように、次の店に歩を進めた。次の店についてはまた別記事にて――。
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