旅行けば千鳥足

北に美味い魚あれば冬に行き、南の焼酎飲みたさに帰省をし、西の良い居酒屋の噂を聞けばしこたま飲み食いをする。そういう人に私はなりたい

【ソトノミログ】新橋『破天荒』で酒の濃さに殴られる

私もなのだが、世間一般において、仕事の繁閑には波と言うものがある。

私は「繁忙真っ盛りの山頂付近」よりも「これから忙しくなりつつある登り坂の部分」のほうが嫌いだ。今から忙しくなるというのが見えてくるのは、それこそ真綿で首を締めるような感じがしており、陰鬱とした気分が拭えないからである。

来週からいよいよ繁忙期に入りそうということで、今日はその陰鬱な気分から逃げるため、退勤後飲みに行くことにした。

いつも飲みに行く同僚は別の飲み会があるため、今回は一人飲みである。

 

職場がある浜松町の隣、新橋駅の駅前であるSL広場では祭りがおこなわれていた。

新橋こいち祭というらしい。祭りはかなり賑わっている。単に露店が出ているだけではなく、福島や佐賀などの、地方の名産を前面に押し出した露店が、チラホラと目につく。

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ただ如何せん、人が多すぎる。このジメリとした熱帯夜の中で、一人で祭りに参加するのは、流石にハードルが高い。暑さから逃げるように、SL広場のそばにあるニュー新橋ビルに歩を進めた。

 

ビル内、特に地下1階には所狭しと飲食店がひしめき合っている。金曜であることと、目前で祭りが催されているからなのか、どの店もサラリーマンたちでごった返している。家庭料理の店、中華屋、餃子専門店……まさに呑み屋の坩堝だ。私がその中から選んだのは、立ち飲みの「破天荒」である。

今夜の一店目は立ち飲み「破天荒」

随分前に二度ほど来たが、それからは、とんとご無沙汰となってしまっていた。飲食スペースは、壁を伝うようにこしらえられたカウンターと、店内の中央に鎮座する柱に沿う感じで置かれたいくつかの机。ある程度のスペースは埋まっていたが、何とか空いていた入口そばのスペースに滑り込み、この店での居場所の確保に成功した。

破天荒の飲み物メニュー

壁に貼ってある飲み物メニューをじっと見つめ、1杯目を何にするか思案する。因みに食べ物のメニューは反対側の壁に掛けられているホワイトボードに書かれているが、今いるから席からは柱が邪魔して見られない。しょうがないので、実際頼むときにチラ見するとしよう。ハイボールの値段の安さは、サラリーマンには実にありがたい。ビールも良いが、ここはハイボールにしておこう。

1杯目はキリン陸のハイボール

一杯目はキリンのウイスキーである「陸」のハイボール。ちょうどいい具合に喉も乾いてきたので、まずは一口。

濃い。思いのほか濃く感じる。炭酸を飲んでいるというか、原液に近しいそれを飲んでいる気にさせられるほどである。キリンのサイトを見るに、陸自体はブレンデッドウイスキーとのことだが、グレーンのほうが割合多いのではなかろうか。ウイスキーの量が多いのか、ウイスキー自体が濃いのか、2口目を飲むころには、思考の中から霧散した。

因みに、2杯目以降を飲むときは1杯目のグラスを注文口に持っていく。そのグラスに注いでくれることになるので、飲み終えてから次を頼むこと。2杯目はチューハイを頼んだが、結局グラスが同じでかわり映えがしないので、写真を撮る気すら起きなかった。

1品目はしめさば

先にも述べたように私のスペースからはつまみのリストが見えない。注文口で頼むその時に初めて確認するので、まさに出たとこ勝負である。パッと見えたものをそのまま言葉にすると、それは炙りしめさばとハムカツであった。

1品目のしめさば。右に偏って見えるのは、一切れ食べてから写真の撮り忘れに気づいたからである。面目ない。炙ってある皮目の香ばしさと、陸のハイボールがよく合う。こういう焼き物や揚げ物に、このハイボールは合うのかもしれない。

2品目:ハムカツ

2品目はハムカツ。これは先に食べたから右に偏っているわけではない。元からこれだ。ハムカツ好きには、「薄っぺらいハムで作ることこそが至高派」と、「厚めのハムこそが究極派」に分かれており、まさに有史以来、泥沼の、それこそ終わりの見えない戦いを繰り広げているわけだが、私は専ら後者である。ハムを食べたいからこそ厚めがいいのである。薄いのがいいというのはもはや衣を食べている飲みに等しいのではないか。

 

私がいるスペースのすぐ横の通路を、呑み屋を探す客の群れがひっきりなしに通り過ぎていく。どこの店に入ろうか物色しながら歩く者、一瞥したのちに別の店へ歩を進める者、この店に私と同じように店内へ引き込まれる者……ずっと見ていても飽きることはない。が、長居するのはなんだか申し訳ない。チューハイを飲み干し、私は店を出た。しめて1,500円。

 

ビルの外に出ると、祭りはいまだに熱を帯びている。目の前の通りを、東京音頭を踊る人の塊が、まるで巨大な一体の生物のように蠢いているようだ。その中に紛れてしまいたい衝動を抑えながら、私はその場を後にした。

 

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