何もしない越後湯沢旅の、いよいよ最終日となる三日目。この記事で旅行記も最後。
こちらの記事をご覧になる前に、下の過去記事も合わせて読んでいただけると。
1日目:越後湯沢で過ごす「何もしない」贅沢旅【1日目】 - 旅行けば千鳥足
2日目:越後湯沢で過ごす「何もしない」贅沢旅【2日目】 - 旅行けば千鳥足
3日目(前半):越後湯沢で過ごす「何もしない」贅沢旅【3日目・前編】 - 旅行けば千鳥足
旅の始まり:JREポイントで新潟へ!「どこかにビューン!」で酒と湯に逢いに行く - 旅行けば千鳥足
いくら冬にはスキー客でごった返すと言っても、やはり温泉街。街中には射的屋やスナックなどが軒を連ねているエリアもある。昭和・平成をかじった身からすれば、少々古臭く感じてしまうこともあるが、最近の若者には、それが好意的に映ることもあるようだ。これがエモいというやつなのだろう。
また、季節柄なのか、土地柄なのかわからないが、そこいらのビルの軒下に、ツバメの巣をよく見かけた。ヒナはけたたましく鳴き、親の帰りを待っている。ヒナは自身では生きていけない。こう考えると、人も鳥も大差ないように思える。
越後湯沢駅の構内には、ショッピングセンターであるCOCOLO湯沢が入っている。土産物屋以外にも、先日行ったぽんしゅ館、飲食店も複数入っている。ちょうどお昼時ということもあり、どの飲食店も満席だったり、待ち客の列ができている。待つことが正直好きではないため、すっと入れそうな店を当たることにして、しばらく店沿いに歩く。一番奥のラーメン屋は、ある程度客が入っていたものの、運良くカウンターが空いており、端の席を陣取った。
新潟は発酵食品が盛んな地域であるらしい。せめて味噌は地のものを使っていてほしい……希望的観測にかけて味噌ラーメンを注文。したのだが、地元の味噌が使われているのかまでは聞けなかった、無念。
辛ネギをどっさり入れたラーメンを啜りながら、これからの予定を考える。これまでは主に西口を歩いてきたが、その反対側に東口もあるらしい。観光案内所でもらった地図を見てみると、地元の酒蔵である白瀧酒造の売店があるらしい。しかも、今年の春にリニューアルオープンしたとのこと。
目的地は決まった。麺をかきこみ、東口に向かった。
西口の賑いとは打って変わって、恐ろしいほどに静まり返っていた。アーケートの軒先からは、きっと提灯などをつなぐのだろう、電線が垂れ下がり、風になびいている。それが柳のように感じられ、一層の寂しさを覚える。一部の飲食店を除いて、入口のシャッターは降ろされたまま。
日曜だから閉ざされているのか、それとも――。
そう、今日は日曜である。
メインイベントと言っても過言ではなかったはずの、白瀧酒造の売店。
土・日・祝 定休日。
映画「猿の惑星」のラストシーンばりに、膝から崩れ落ちそうになる。もう乾いた笑いしか出てこない。周りに人がいなくてよかった。笑いすぎて変質者呼ばわりされるやも知れない。
客が多いであろう土日祝が休みというのは、逆に新鮮味があるというかなんというか。平日だけでリニューアル費用がペイできるのか、気になるところである。
と、いつまでも開かない店の事を考えていてもしょうがない。まだまだ時間はある。しばらくは酒を飲まないつもりだったが、しょうがない。温泉街のある西口のエリアまで戻る。
運良く立ち飲みできる、たつのや商店なるお店を見つけた。
30分のみという制限付きではあるものの、落ち着ける場所があるだけでありがたい。つまみになる駄菓子が売ってあったり、一杯100円から飲めるというのも、また、飲兵衛にはとても助かる。
日もまだたかいので、4杯ほど試飲して終了。
ここにはサフラン酒なるものもあるらしい。次来た折には、一杯嗜んでみたいところだ。
ここからまたもや駅に戻る。何杯かアルコールを入れたおかげで、先ほどより足取りは軽い。
駅のコンコースに出ている屋台らしき場所で、エチゴビールとモツ煮をいただく。ビールは軽い口当たりでスイスイ飲め、赤味噌で味付けされたであろうモツ煮との相性もいい。
時計を見やると、16時前。そろそろ頃合いだろうという事で、また温泉街を歩く。たつのや商店を過ぎたあたりにあるのが「のみすぎ謙信」だ。
入る前から名前が気に入っていた。こういう、名前に茶目っ気のある店は大体、素敵な店であることが多い。開店準備が終盤なのか、店員が店先にメニューの書いた看板を出していた。1人である事を伝えると、快く中へ入れてくれた。
一杯目は先日飲んだ「風味爽快ニシテ」の生。缶ビールもいいが、ここまで暑いと生の方が爽快感が増すというもの。呼吸もそっちのけにして、胃の腑に流し込む。言葉なぞいらない。野沢菜の歯応えもいい。
2杯目は、お勧めしてくれた「巻機tsubasa」。冷酒の清らかさがに染みる。ここはもうこれしかないと、生牡蠣を二つ頼む。この牡蠣はパンチのある磯臭さではない。実に穏やかである。この穏やかな磯の香りを酒の風味が包んでくれる……これを至福というのだろう。
いよいよ終わりの見えた3杯目に、鶴齢の冷を頼む。実にうまみの深い辛口だ。甘みの強いものよりも、鶴齢や巻機のような柔らかな甘味・うまみのある酒のほうが合う。
また、夏といえば、個人的に浮かぶのはそら豆だ。この店は房のまま出してくれた。
多少急ぎ足になったものの、ここまででいい頃合いだ。名残惜しいが勘定をして外に出た。日は多少落ちてきているものの、熱気はまだ十分といったところ。足取り軽やかに駅へ戻っていく。
新潟駅の人身事故が影響するものかと思っていたが、定刻通り新幹線は越後湯沢駅に滑り込んだ。多少の寂しさとともに、私は新潟を後にした――。
また来るよ、新潟!
「何もしない」ことを目標にした今回の旅、結局最後は時間を持て余してしまい、街中を右往左往することになってしまった。一方で、今回のような予定をぎちぎちにつめない、いい意味でも悪い意味でも余裕のある旅こそが、新しい発見をすることができる、そう再確認することができた。
ありがとう新潟。
ありがとう越後湯沢。