私は自分から、誰かを誘って飲みに行くことが多くない。
会社であれば、専ら後輩が誘ってくれるので、それに相乗りすることが多い。そのため、相手からの誘いがなければ、一人で飲むことが多くなる。友人の数もさして多くないことも影響しているかも知れない。
大体は職場に近い新橋周辺。仕事が早く終わり、夜の時間が一定程度確保できるようであれば、自宅の最寄駅近辺となる。先日も、自宅最寄り駅のやきとん屋「S」で引っ掛けることにした。
その日は金曜日。いつにもまして混雑しており、盛況である。私が行くのは、月~木が多いため、このお客の多さには少々面食らった。カウンターに腰を下ろし、ホッピーの黒セットを頼む。ここはナカ――いわゆる焼酎の量が多い。この歳にもなって、焼酎の量で一喜一憂するのはさもしい気がしないでもないが、時折、ホッピーを頼んだことを後悔するぐらいの少量の焼酎で、200円近くとる店に遭遇することを考えると、ナカの量であーだこーだ言ってしまうのは、大目に見てほしいとも感じる。

店内の喧騒に体を浸しながらホッピーをあおると、一日の疲れが体外に滲み出すような、そんな感覚を覚える。これだ、これが欲しくて酒を飲んでいるのだ。
今年から役職がつき、少ないながらも部下もできた。これまでのように、自分のことばかり考えていられない。考えなければならないことは指数関数のように跳ね上がる。
四六時中考えているわけにもいかないから、こうして、酒を飲んで悩み事に自らモヤをかけている。
他方で、酒を飲んだところで問題が解決しないことも承知している。ただ、問題に蓋をしてその場をやり過ごしているに過ぎない。そんなこと、重々承知している。

ここに来るまでに、乗換駅の立ち食い蕎麦に寄って蕎麦をたぐってきたので、ここでは食事というより酒のツマミ程度。歯ごたえのあるメンマは癖になるので、あればだいたい注文する。黒こしょうと長ネギのぴりりとした感じは、ホッピーによく合う。

タンもしくはカシラ。正直ヤキトンの部位は全然区別がつかない。大変失礼な話だとは思うが、飲み進めていくと、どっちがどっちというのは大した話ではなくなっていく。
さて、自宅の最寄駅近くにある店のうち、何度か顔を出したのは、ここを含めて、3軒ほどあるが、最近はもっぱらこの店に来ることが多い。理由としては
- ホッピーのナカの量がある程度自分で決められる。
- 支払いの手段が多い
この2点につきる。他の2店舗はどちらかの条件を満たすが、他方は満たしていない。この店だけが、上記条件を満たしてくれているので、必然的に来る回数は多くなってしまう。

豚もやし。通常サイズとハーフサイズがあるが、こちらはハーフの方。一人であれば、この量でも多いぐらいだ。これもまた、塩味と胡椒の辛さが酒地獄に誘っていく。
この日の勘定は確か3,500円ぐらいだったろうか。時間も自宅近くへ向かうバスの発車時間に十分に間に合う。
結局、酒を飲む理由はなんなんだろうか。
きっと答えは出ないまま、これからも飲み続けていくのだろうな――そう思いながら、店を出た。
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